【卒業生紹介Vol.3】デジタル化支援の最前線 中小企業支援のリアル

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―専門職大学院での学びを地域金融機関でどう活かすか
前田 真輝(2024年度 大塚ゼミ卒業/現・地元信用金庫勤務)

2024年度に専門職大学院を修了してから、早くも1年が経過しました。この1年間、私は信用金庫の新設部署で、大学院時代に研究した「中小企業のデジタル化推進」に関わる実務に従事してきました。
配属されたのは、金庫全体と顧客企業の両面から事業価値向上を目的とした新部署。その中で私は、特に中小企業のデジタル化支援を担当しています。

現場に立って初めて見えた“アナログの強み”と“デジタルの壁”

大学院では「中小製造業におけるデジタル化推進と合意形成」をテーマに研究していましたが、実際に戻った現場で向き合う企業は製造業だけではなく、飲食、小売、卸売など多種多様です。

信用金庫のお取引先企業の多くは、売上高5億円未満、従業員20名以下の中小零細企業です。こうした企業にとって、必ずしも「デジタル化=最適解」とは限りません。むしろ、アナログなやり方のほうが機動力があり、それ自体が強みとなっているケースもあります。 一方で、「IT人材がいない」「導入コストが出せない」「そもそもベンダーから営業されない」といった理由から、デジタル化への意識は高くない状況が多く見られました。

合意形成のカギは、“体験”と“プロトタイプ”

しかし、実際に企業の方々と話を重ねる中で見えてきたのは、「やらなければとは思っているが、何から始めて良いかわからない」「従業員との摩擦が心配」「手が回らない」という、意欲と実行の間にある“壁”でした。

そんなとき、頭に残っていたのが大塚先生の言葉です。

「システムは後でついてくる。目的を達成するために、業務をどう変えるかに集中せよ」

この言葉を実践すべく、私はGoogleスプレッドシートを用いた“業務プロトタイプ”の提供を始めました。在庫管理や案件管理など、業務改善の入口になりそうなテーマを、まずは簡易的に可視化・体験できるツールとして提供し、それをベースに経営者・従業員とディスカッションを進める――このプロセスが、着実に成果を上げ始めました。

無料ツール × ヒアリング重視で生まれる新しい関係性

GAS(Google Apps Script)を活用すれば、見た目にも“システム感”が出て、低コストながら本格的な業務改善の第一歩になります。スプレッドシート上で動くプロトタイプは、「ツール導入ありき」ではなく、「課題の本質と向き合うきっかけ」として非常に有効です。 今年3月には、東大阪の支店で実施した経営者向けセミナーでこのアプローチを紹介したところ、大変良い反応を得ることができました。

研究は続く――「合意形成」というテーマを現場から磨く

この1年間、「相談→プロトタイプ作成→対話」というサイクルを繰り返す中で、ようやく“手ごたえ”を感じられるようになってきました。そして今後は、単にツールを導入するだけでなく、「経営者と従業員間の合意形成」という、大学院での研究テーマそのものを、より実践的に深めていきたいと考えています。 今後も、地域の中小企業が“納得感を持って変われる支援”を実現するため、大学院で得た視座とスキルを活かし続けていきたいと思います。

【大塚先生が当庫にも来た!】

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